この記事では、素人でも肩の原因を探り方を載せています。「自分や家族の肩痛はなんでなんだ?」に近づくことができる内容になっています。必ず有用な情報となります。
前置きが不必要な方は下まで飛んでくださいね〜!!!
皆さんは1度や2度は肩が痛くなったりしたことはありませんか?
きっと肩が痛くなったことがある方が多いのではないかと思います。もしくは家族が肩を痛がっているなぁ・・・というときもありますよね。そんな時、「まぁ放っておけば治るだろう」「別に我慢出来るし問題ないだろう」「インナーマッスルを鍛えればいいんだろう」と思ってしまっているのではないでしょうか。
それは半分正解で半分間違っています。
どんな時にインナーマッスルの筋トレをやればいいのか?
そもそも、何が原因で痛みが生じたのか、いつから痛いのか、何をすると痛いのか、どのタイミングで痛いのか・・・
これらは一人一人異なりますよね。そのため、「よく筋肉を鍛えましょう」なんて言いますが、これが万人に通じないのが実際のところです。
例を出しますと、
- 高校野球選手が1日に500球投げた後から痛みが出てきた
- 50歳男性がダンプカーとの交通事故を起こし、その時から肩が痛くなった
- 60歳女性が5年ほど前から家事が忙しくなり、その時からだんだん肩が痛くなった
どうでしょうか。
この3人の年齢、痛みの出た状況などを見るだけでも原因が全て同じとはならないですよね。大事なのは「原因」なのです!!
病院に勤務している医師・理学療法士は、「疼痛がなぜ生じたか」「どうすれば痛くなるか」を見極めることが得意です。それが分かるから原因が分かる。原因が分かるから治し方が分かります。その中で無理しながら動いていると、競技復帰が遅れたり、痛みが残り続けたりする可能性があります。
でも、「病院にいくほどでも・・・」という方も中にはいらっしゃると思います。そんな方・素人の方向けに、一体自分・家族はなんで痛みが出ているんだ?という疑問を少しでも解消させ、本当に受診するべきケガであった場合に「やはり受診した方がいいな」と少しでも考える機会になればと思います。
目次
肩関節の構造って・・・
そもそも肩ってどのような作りになっているのでしょうか?
私が患者さんに説明する時には
「右手でこぶしを作って、左手で包むように右手と左手を合わせてください」
と言うことが多いです。まさにこの形が肩関節の構造です(細かな靭帯などは考慮していません)
ここでイメージしてください。
右手が左手の中で包み込まれている状態であれば、右のこぶしはグルグル回ります。ところが、右手がちょっと手前(左手の親指側)もしくは上側(左手の中指側)に移動した状態からだと、スムーズに右のこぶしはグルグル回らないですよね??
当然このような物理的な接触があると、そこの当たっている部分に痛みが出てくるのです!!
単純に考えると、少しイメージしやすいかと思います。
しかし、肩の痛みの原因はこのように物理的に生じるものだけではありません。
では、痛みの原因はなんなのでしょうか?
肩の痛みの原因は・・・
肩の痛みの原因は大きく分けて2つあります。
- 肩関節自体が原因
- 肩関節以外が原因
の場合です。
「なんのこっちゃ?」ですよね笑 それでは説明していきます。
肩関節自体が原因
先程の例で言えば、交通事故を起こした方の場合です。
肩関節もしくは、肩関節の周囲に解剖学的な(簡単に言えば人間を作っている筋肉や骨や靭帯など)の損傷による怪我、痛みのことです。
交通事故などの外傷によって
- 肩の骨が折れてしまう
- 筋肉が切れてしまう
- 靭帯が切れてしまう
などが考えられます。
肩関節以外が原因
もう一つの肩関節以外が原因の場合です。
先ほどの例では「高校野球選手」や「60歳の家事をやっていた人」の場合ですね。
これって良く考えると
結果としては「肩関節自体が原因」で生じる怪我と同様に
- 肩の骨が折れてしまう
- 筋肉が切れてしまう
- 靭帯が切れてしまう
ということが生じるのですが、さらにその原因を考えてみましょう。先ほどのもので言えば、その原因は「交通事故」ということになります。
さて、今回のような高校野球選手の場合、何球も何球も全力で同じ動きでボールを投げたり打ったりしますよね?一般的な健常の方でも同じ動きを全力でやっていれば疲れや負担が生じてきます。特にスポーツ選手であればその力というものはとても大きくなりやすいのは、容易に想像できるかと思います。この負担がケガを引き起こし、障害が生じるのです。使い過ぎ症候群とも言われますね。
だから少し休んだとしても、結局また同じ動きで同じ強さで動くと同じ痛みが出てきてしまうんですね。
要はまずは発症起点が、
「外傷による痛み」なのか「障害による痛み」なのか
を考えるのが第一段階になります。
痛み始めたのが「何かにぶつけてからなのか・・・」
痛み出した時に「何か新しいことを始めたのか・・・」
などの考えるといいですね。
肩の痛みにはインナーマッスルを鍛えた方がいい?
これまでの話だけでも、「肩が痛ければインナーマッスルを鍛えればいいんだ!!」とは一概には言えないことが分かると思います。
骨折をした人、野球で肩を壊した人、手術直後で痛みが出ている人・・・・
こんな人たちにインナーマッスルの練習はやりませんよね?笑
これらは大げさなものですが、「インナーマッスルは必ずしも必要があるというわけではないんだな」という感覚があればいいかと思います。
痛みの場所を見つけたい・・・
それでは前述した第一段階がしっかり把握できたとして、次のステップに移ります。
先ほどの痛みが出た原因が分かったとしても、実際にどこが・何が痛いのかを把握しなければなりません。ここから先は、スポーツ選手や家事をやり過ぎた主婦の方のように、障害が出現した場合を中心に書いていきます。
実際にスポーツ選手や病院の患者さんを診る時には、実際に触ったり、見たりして痛みを出しているものが何かを調べていきます。
しかし、それだけでは判断が出来ないことも多く、むしろそのような場合の方が多いです。
そんな時には、スペシャルテストを行っていきます。では、スペシャルテストとはなんでしょうか?
スペシャルテスト
スペシャルテストとは
障害が発生した時に、あえて痛みが出ている部分にストレス(負担)をかけることで痛みを生じさせる方法のことです。これにより、どのようなストレスで痛みが出るかが分かり、どこに・何に痛みが出るかを判断しやすくなります。
ここからは、素人の方にも見ながら出来るように説明しつつ、スペシャルテストの方法を紹介していきます。
肩の筋肉が切れている・損傷しているかもしれない(腱板損傷)
肩の筋肉が切れる可能性があるのはまさに、肩のインナーマッスルである「棘上筋・棘下筋・肩甲下筋・小円筋」の4つの筋肉です。これらのどの筋肉が切れているかを判断することが重要になります。
肩の痛みが生じる場所ごとに切れている可能性のある筋肉は異なります。肩の痛みが出ている場所ごとに分けて紹介します。しかし、必ずしも痛みが出ている場所とテストの結果が一致しないケースもあります。
棘上筋
エンプティーカンテスト(empty can test もしくは Jobe test)
有痛弧徴候(painful arc sign)
腕落下徴候(drop arm sign)
棘下筋
フルカンテスト(full can test)
バネ戻りテスト
上腕二頭筋
スピードテスト(Speed test)
ヤーガソンテスト(Yargason’s test)
肩甲下筋
リフトオフテスト(Lift off test)
ベリープレステスト(belly press test)
肩がグラグラ不安定になっているかもしれない(肩関節不安定症)
前方
前方不安定感テスト(anterior apprehension test)
負荷偏位検査(Load and shift test)
てこ台検査(フルクラムテスト)
ロックウッドの不安定性検査(Rockwood test)
ロウの不安定性検査(Rowe test)
後方
後方不安定感テスト(posterior apprehension test)
負荷偏位検査(Load and shift test)
ジャークテスト(Jerk test)
下方
下方不安定性検査(サルカスサイン)(sulcus sign)
腕の骨と肩の骨がぶつかっているかもしれない(肩峰下インピンジメント)
ニアーのインピンジメントテスト(Neer test)
ホーキンス-ケネディのインピンジメントテスト(Hawkins-Kennedy test)
肩の受け皿が損傷しているかもしれない(関節唇・SLAP損傷)
前方脱臼感(クランク)検査(Crank test)
オブライエンの自動圧迫検査(Active compression test of O’Brien)
肩が脱臼しているかもしれない(肩関節脱臼)
肩が脱臼するのは、前方に脱臼するのが95%、後方に脱臼するのが5%と言われているため、主に前方に脱臼しているかを判断する方法を書いていきます。
前方不安定感テスト(anterior apprehension test)
前方脱臼感(クランク)検査(Crank test)
このようにたくさんの検査があります。
1つずつ見るとちょっと疲れますね・・・笑
でも必ずや、肩が痛くて原因を知りたい人には有用かと思います。
インナーマッスルの筋トレはいつやる?
これまで原因探索について説明しました。大体大まかなテスト内容は網羅できているのではないかと思います(ブックマーク推奨かも、、、ぼそっ)。
さて!今回のテーマ、結局インナーマッスルの筋トレはいつやるの??ということです。
例えば、腱板損傷のように筋肉自体にダメージがある場合、筋トレでさらに負荷を与えるとさらに悪化しそうですよね?そのような場合は筋トレはあまり推奨しません。
一方、肩峰下インピンジメントのように骨と骨がぶつかってしまっている場合、筋肉を上手く使ってぶつからないように動かさせるのは大事です。だって、本来ぶつかるものではないのですから。このような場合は必要な筋肉を鍛える必要があります。
じゃあ何の筋肉を鍛えたら、どのインナーマッスルを鍛えたらいいのか・・・?
それの答えは、「断定できません」。です。ここまできてすみませんが、、、
ここまでの内容をお読みいただければ分かるように、肩の痛みだけでも種類が多すぎるのです。でも、それぞれ原因があって、「それに当てはまる練習をやらないとな・・・」ということはわかってきたかと思います。本当に人によって鍛えるべき筋肉が異なるのです。それでも、どうしても知りたい!という方・・・
とにかく何の筋肉を鍛えたらいいか知りたい!!
今までの内容を前提としても、何の筋肉を鍛えたらいいか知りたい!予想・勘でもいいから知りたい!という方、一般論と私の見解を含めて簡単に紹介します。
そもそも肩におけるインナーマッスルとは
腱板損傷の筋トレ
腱板損傷の場合、痛んでいると思われるインナーマッスル以外のインナーマッスルを鍛えていくことになります。先ほど例にあげたスペシャルテストで、痛んでいる筋肉がだいたい分かったとします。そうなると、残りのインナーマッスルの筋肉を鍛えていけばいいということです。
それと重要な点がもう1つ。肩甲骨の周りの筋肉を鍛えるということです。
インナーマッスルは腕の骨と肩甲骨を結ぶようにくっついています。ということは、肩甲骨がグラグラしているとインナーマッスルはしっかり動きません。そのため肩甲骨の周りの筋肉を鍛えた方がいいと考えられます。
具体的な筋肉でいうと
肩関節脱臼の筋トレ
肩関節が脱臼するというのは、先ほども行ったように、前方に脱臼するパターンが多くなります。
この脱臼する可能性の高い肩の姿勢というのは、ボールを投げる時に手が一番後ろに引っ張られる時の肩の形です。長時間勉強して「ふあ〜〜〜!!」って両手をあげて背伸びをする時、肘が伸びきるちょっと前の肩の形です!!
ここでイメージしてみると、さらに手が後ろにいかないように制御するのが重要そうですよね?
それを制御するのが「肩甲下筋」となります。当然、それ以外のインナーマッスルも重要ですが、優先度が高いのは「肩甲下筋」です。
また肩甲骨にくっついている筋肉を鍛えるのも、先ほどと同様に重要です。
こちらもトレーニング方法はネットにたくさん出ていますので、見てみてください。
四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)の筋トレ
四十肩・五十肩って、「肩関節周囲炎」と言われるものです。
肩関節周囲炎は、名前の通り「炎症」なのです。そのため何もしなくても痛みが出ている場合は「強い炎症が生じている」と考えられますので、その時は痛みを出さないように生活したり動かす必要があります。
痛みが徐々に取れてきたタイミングで、筋トレを行うのが一般的な考え方になります。
ここまで筋トレについて話をしてきましたが、筋トレだけでなく、筋肉のマッサージも重要になります。筋肉によっては、肩を動かすのをかばうことで硬くなってしまっているものもあり、それらは緩めて過剰に働かせないようにすることが重要になります。これらを抜きにした場合の筋トレは、棘上筋・棘下筋・肩甲下筋・小円筋の全ての筋トレを行う必要があります。特に私の印象としては、最初は棘下筋・肩甲下筋・小円筋のトレーニングを行い、中盤にかけて棘上筋のトレーニングを開始するのが良いと思います。
分からなければ無理をせず、しっかり医療機関に受診してくださいね。
筋トレにはセラバンドは必須!!
姿勢も大事
肩を考える上では普段の姿勢も非常に大事です。
例えば、
- 普通に椅子に座ったまま腕を前から上に上げる
- 椅子に座ったまま猫背になってから腕を前から上に上げる
これら2つの動きを試してみてください。
圧倒的に前者の方が腕が上がりやすいですよね?
猫背になるように肩が前に出てくるような姿勢になると、
「肩が上がりにくくなる」→「いろいろな筋肉でかばう」→「かばっている筋肉が痛くなる」→「肩が痛くて良い姿勢を保てず猫背になる」→「肩が上がりにくくなる」・・・・
という悪循環になります。
姿勢は後ろから見て、両側の肩甲骨を内側に寄せるように・胸を張るようにするよう意識してください。
これだけでも肩へのストレス・負担は軽くなります。
腱板損傷・肩脱臼の手術後
少し手術について書いておこうと思います。
今は肩の手術でも、関節鏡視下での手術が行われています。細かい手術内容もいろいろなネットに上がっていますので見てみてください。
もし手術を行ったとしたら、、、を前提に、術後の経過を簡単に書きます。
手術後は翌日から歩行を開始、普通に歩けますし、麻酔の影響がなければご飯も食べられます。
腱板損傷の場合には「ウルトラスリング」と呼ばれる、脇の下をとじないようにクッションのようなものを脇の下に挟むような装具をつけるようになります。
退院は基本的に歩くことができて、装具の着脱ができれば早期に退院可能です。
10日前後で抜糸をするのが多いです。
その後1週間の安静、2週間経ってから徐々に肩を動かす運動が開始となります。
ただ、自分の力だけで腕を上げたりするのは、術後1ヶ月前後になります。
その後は痛みに合わせてリハビリを行っていきます。
だいたい軽作業(軽く腕を使った仕事、軽いキャッチボールなど)は2〜3ヶ月前後、本格的なスポーツ復帰(ラグビーやアメリカンフットボールなどを含む)は6〜7ヶ月後が目安時期となります。脱臼の場合は、脱臼をした経験による不安感が残る場合もあります。
ただ、当然手術内容や執刀医によって経過は異なる場合があります。
最後に
今回は肩が痛かった場合、どう考えていくか、また実際に病院や臨床の場で行われている検査方法について紹介しました。
同じ部位・同じ怪我でもいろいろな種類の検査方法がありました。1つの検査が当てはまったからといって、確実にその怪我であるとは言えません。これらを総合して考えた結果で判断していきますので、ヒントにしかすぎないのですね。
しかしそうだとしても、とても有用なヒントになりますし、大まかに自分の肩の何が痛みを生じさせているのかが分かります。
繰り返しになりますが、自分で原因や損傷している筋肉を同定することがメインの目的ではなくこれをみて可能な範囲で検査が出来た場合、
「この痛みが出るなら、早めに検査したり病院に行った方がいいんじゃないか・・・?」
「このまま運動を続けていたら悪化するかもしれないからちょっと休息をした方がいいかな・・・?」
と、自分に生じているかもしれない怪我の可能性を見つめ直すことが重要です。
私は「予防・早期発見は最大の医療」だと考えています。怪我をしてからでは遅い、その前にいかに気づいて対応できるかが大事です。
ぜひこの記事を参考に、自分、または家族の身体を考える機会にしてみてください。
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