今回は臨床でも頻繁に使われる肩関節の不安定性を判別する肩関節の不安定性テストである負荷偏位試験(Load and Shift Test)の方法を説明します。
何度もボールを投げたり、ラケットを振ったりしているとだんだんと肩が緩くなることがあります。すると脱臼など肩の怪我につながりますが、その時には肩の前が不安定となり痛みが生じます。
ただそれだけではなく、その状態で運動を続けていると肩の全体が緩くなってくることもあります。
そのため、肩の不安定性を評価する必要があります。今回は肩関節の不安定性をテストするものになります。
肩関節の不安定性のテストは
肩関節の前方・後方の不安定性テスト(anterior/posterior apprehension test)
肩関節の下方の不安定性テスト(sulcus sign)
もありますので、合わせて要チェックです。
おすすめの参考書はこれ!!
目次
負荷偏位試験(Load and Shift Test)
負荷偏位試験(Load and Shift Test)は、少し解剖学的な知識があると、やりやすいテスト内容になります。
テストされる人の姿勢
テストする人(検査をする人)の動き
- 上記の通り座ってもらいます。
- 鎖骨と肩甲骨の上から手を置き、肩を固定させます。
- もう一方の手で、腕の骨の一番上(上腕骨頭)を掴みます。
- 掴んだまま、それを前後方向に動かし、どの程度動くのかを感じます。
動画
みるべきポイント
通常、上腕骨頭は上腕骨頭の直径の約25%移動します。要は、人差し指と親指で掴んでいるとしたら、それらの指の間の距離の1/4の距離動かすことが出来る場合は正常となります。
これにも段階付けがあります。
段階付け
- グレードI:25〜50%の偏位量があるが自然に整復される
- グレードⅡ:50%以上の偏位量があるが自然に整復される
- グレードI:完全に脱臼し自然には整復されない
このようにグレードはありますが、後方の偏位量に関しては50%の偏位は正常と考えられています2)。
まとめ
負荷偏位試験(Load and Shift Test)の方法を紹介しました。
医療従事者の方は、上腕骨頭と関節窩との位置関係を見て、正常かどうかを判断する必要があります。また上腕骨頭がどの方向に向いているかを確認します。正常であれば、上腕骨頭はやや前方を向いていますので、可能でしたらここも確認できると良いですね。
ただ、陽性になったからと言ってすぐに対応が必要とは考えられません。その他のテスト結果や主訴との兼ね合いで、何か心配になることがあれば医療機関への受診をお勧めします。
肩関節の前方不安定性を検査するものには肩関節の前方の不安定性テスト(anterior apprehension test)、フルクラムテスト(fulcrum test)、リロケーションテスト(relocation test)という方法もあります。
肩関節の後方不安定性を検査するもにはジャークテストという方法もあります。これらは特にやる価値のあるものになります。
最も多い肩の痛みの原因をチェックするインピンジメントテストはこちらを参考にどうぞ。
. Clinical Evaluation of Shoulder Instability. Clinical Journal of Sport Medicine: 59-64, 1991
2)
.Glenohumeral translation in the asymptomatic athlete’s shoulder and its relationship to other clinically measurable anthropometric variables. Am J Sports Med 24(6): 716-20, 1996
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