病院でレントゲン撮ったけど
結局原因分からないじゃん!
という方、少なくないと思います。
でもレントゲン撮って、診察して、痛み止め出されて、安静にして、また痛みが出て、診察して、痛み止め増やして、、、、
という無限ループの人も、患者さんの話を聞くと結構たくさんいます。
しかし医師も1日に相当数の患者さんを診るわけですから、全員に対して細かく検査をしていくことは現実的には困難な場合が多いです。
そのため、医師だけでなくリハビリの先生や、可能であれば一般の人ができる検査があります。一般の方が積極的に行うべきだというわけではありませんが、それくらい簡単で、原因が分かる可能性があるのであれば良いなと考えています。
詳細はこちらにまとめています。
では、なぜ実際に痛くてもレントゲンを撮っても原因がわからないのでしょうか。
目次
レントゲンで分かること
そもそもレントゲンに写るのは
肺や心臓の形、骨折があるかないか、骨や関節の状態です。
レントゲンは
- 空気:黒
- 水:黒と白の間
- 骨:真っ白
のように写るため、その陰影や骨の形などで怪我や病気を判断するわけです。
しかし、筋肉や靭帯、ごく小さい骨折や筋損傷は写らないのです!!!
そのため、それらに損傷があった場合はレントゲンを撮っても気がつかないのです。それらを判断するためにはMRIやCTを使うことになります。
そのため、例えば肩が痛くて肩を撮った場合にレントゲンで分かることは
「肩の周りの骨折はなく、肩の関節も特にズレたりしていないな」
ということなのです。原因を見つけるとともに、原因と考えられるものを消去するために使われる感じです。
よって、先ほど書いた無限ループに陥るわけです。
余談ですが、肩の筋肉をチェックする方法もありますので、これらを参考にしてください。
https://pinkhoppe.com/blog-shoulder-empty-full-can-testjobe-test
https://pinkhoppe.com/blog-shoulder-bicipital-tendinitis
実際に多い怪我 肩インピンジメント症候群
ここでは特に臨床の場で出会いやすい「肩のインピンジメント」の検査方法について説明します。五十肩・四十肩の人にも見られやすい所見になります。
肩のインピンジメントとは、腕を上げる時に「肩の関節の間で筋肉や組織が挟まれる」ことで痛みや引っ掛かりが生じることです。
今回は臨床でもとても頻繁に使われる肩関節のインピンジメントを判別する
- ニアーのインピンジメントテスト(Neer Impingement test)
- ホーキンス-ケネディのインピンジメントテスト(Hawkins-Kennedy Impingement test)
の2つの方法を説明します。
ニアーのインピンジメントテスト(Neer Impingement test)
テストされる人の姿勢
テストする人(検査をする人)の動き
- 上記の通り座ってもらいます。脱力するように伝えておきましょう。
- 検査する腕を内側に回すように動かし、そのまま腕を前に持ち上げます(他動肩関節最大内旋のまま他動肩関節屈曲をさせる)。
- 補足:内側に回すというのは、右腕の場合、手を下ろした状態で右の小指を上にして手のひらを外側に向けた状態のことです。この時肘は外側を向いています。
みるべきポイント
腕を持ち上げた時に、肩の上やや前方に痛みが出れば陽性となります。
この動きは、肩甲骨の骨と腕の骨が接触することになります。医療用語では、肩峰の前下方と大結節が接触(インピンジメント)が生じているということになります。
また挟まれる可能性のある筋肉・組織は
- 棘上筋:腕を外に開く筋肉
- 上腕二頭筋:肘を曲げる筋肉
- 烏口下滑液包
となります。そのため、上2つの筋肉をたくさん使いすぎてしまった場合でも陽性になることがあります。
動画
ホーキンス-ケネディのインピンジメントテスト(Hawkins-Kennedy Impingement test)
テストされる人の姿勢
テストする人(検査をする人)の動き
- 上記の通り座ってもらいます。脱力するように伝えておきましょう。
- 腕を前90°上に持ち上げ、腕を内側に回していきます(他動肩関節屈曲90°のまま他動肩関節最大内旋させる)。
みるべきポイント
腕を回した時に、肩の上やや前方に痛みが出れば陽性となります。
先ほどやった、ニアーのインピンジメントテストと同様のことが言えます。
動画
注意点
しかし、この2つのテストが陽性だったからと言っても、必ずしも肩のインピンジメントが生じているとは断言できません。
それは、特に急性期に行った場合です。
怪我をしてあまり時間が経ってない場合は、そもそもまだそこの筋肉や組織が痛んでいる状態になります。なので、色々と腕を動かしただけでも痛みが出るのは当然なのです。
また痛みが出ることで筋肉が痙攣し痛みが出る「筋攣縮(筋スパズム)」というものも生じている可能性があるのです。そのような時期は痛み止めを服用し安静にしてまずは炎症を改善させなくてはなりません。炎症は、夜や夜中に痛みが出る・何もしなくてもジンジン痛い場合を目安にしてください。
よって、本当に肩関節の挟み込みによって痛みが出ているのかは、注意する必要があります。
まとめ
今回はニアーのインピンジメントテスト(Neer Impingement test)とホーキンス-ケネディのインピンジメントテスト(Hawkins-Kennedy Impingement test)の方法を紹介しました。
肩のインピンジメントが生じていると、肩の腱板と呼ばれる「棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋」の4つの筋肉・腱が断裂する可能性があります。これを腱板断裂と呼びます。先ほども記載したように、腱板断裂はレントゲンでは写らず異常がないと判断されがちです。そのため気づかず、日常生活の中で断裂してしまうんです。
断裂するのは仕方がないとしても、重要なのは「完全断裂を防ぐ」ということです。筋肉や腱も、部分的に断裂しているだけであればまだ良いのですが、完全に断裂してしまうと相応の手術が必要になってしまいます。また完全断裂ほど術後の改善は低くなりやすいため、可能な限り早期に見つけることが大事になります。「早期発見・早期治療」がキーポイントです。
レントゲンでは判断できない分、MRIでは腱板断裂は見つけることができます。しかし、近年では超音波(エコー)を使って診断ができるようにもなっています。赤ちゃんを見る時にお腹に当てるアレみたいな感じです。リハビリテーション界でもスポーツ場面や臨床場面でエコーで確認しながら治療を行うようになってきているので、今後の発展にも期待したいところです。
これはテスト単独での信頼性は低いため、他の関節の緩さのテストなど、複数のテストを行って判断するようにしましょう。
肩の筋肉をチェックする方法はこれらがあります。
その他のテスト結果や主訴との兼ね合いで、何か心配になることがあれば医療機関への受診をお勧めします。
.The shoulder in sports. Orthop Clin North Am 8(3): 583-91, 1977
Impingement syndrome in athletes. Am J Sports Med 8(3): 151-8, 1980
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